CINEMA CLUB バックナンバー

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「明日に向かって撃て」
A+

 これはもう名作。青春西部劇の傑作。TUTAYAでコメント募集していたのでこの作品で書いたら載りました。店舗にまだ掲示してあるかな。

 なんていうかな、全編がキラキラしているという印象。映写機がカラカラと回るセピアの画面で始まり、敵中に飛び出し、一斉射撃の音だけが残るラストシーンまで、もう一気に見せます。ユーモアも随所にあり、ちょっと笑わせてくれますね。同じキャストの「スティング」もなかなか洒落た映画ですが、やはり本家はこっち。続編もあるようですが、つまらないに決まっているので見ようとは思わないです。

 見ていない方はぜひ!。若々しいポール・ニューマンとロバート・レッドフォードを見てもらいたいものです。

                                                                   

98/12/05


「チャンス」

B−


 これはウーピー・ゴールドバーグ(「ゴースト」で強烈な女占い師、「天使にラブソングを」では歌うおばちゃん)が優秀なファンド・マネージャーをやっちゃうという話ですね。やっばりこの人の個性というのは強烈でして、なかなかいいですね。

 あと、いくら優秀でも証券会社(かな?)の中で重役になれないという女性差別もからんできます。こういう「公平」さを描いた作品というのはアメリカでは受けがいいのでしょう。

 それから、ファンド・マネージャーを描くというのが作品になるというのが、市場最高値を更新するNYダウ。それを支える個人投資家みたいな状況がやはり背景にあり、だからこれが映画として成立するのだというのも、アメリカらしい。
 日本でこんな作品を作っても受けないですよ。
 ま、そんなに喝采するほどのものでもないですけど、私は楽しく見られました。零細個人投資家ですから(^_^;)。

                                                                   98/11/30


「もののけ姫」

B−

 他聞にもれず、私のところにも「もののけ姫がうちに」きております(^_^;)。

 邦画のアニメとしては大ヒットした映画ですね。宮崎アニメを見ていつも思うのは作画の丁寧さです。宮崎作品を見てからディズニーを見ると「なんなの、この雑さは・・。」と思ってしまいます。ディズニーは作品によって格差がでかい。「ピノキオ」の鯨のシーンとか作品全体としての「不思議の国のアリス」などはさすがと思わせますが・・。

 「もののけ姫」ですが、この作品の基本のテーマは主人公のアシタカのあり方そのままだと思います。「あんた、いったいどっちの味方でどういう奴なの・・。」という印象ですが、これは自然の側と開発の側で揺れ動く人間のあり方ですよね。実はこのテーマは「平成狸合戦ポンポコ」でも同じです。私はこのテーマのあり方そのものは悪くないと思います。

 ただ、大人が見るアニメとしてはストーリーの奥深さみたいな点で不満ですね。もっと描き込めるところはあるように思いました。

 しかし、私が最悪作品と思っている「おもひでぽろぽろ」よりはずっといい。この作品、そもそも「なんでアニメなの?」っていう疑問が基本にある上に、内容が「悪しき農村美化主義」みたいな感じがして、非常に嫌いです。
 ま、Cにするほどでもないので、この作品はB−。
                                                                 98/11/30


「ショーシャンクの空に」


 気持ちのいい映画ですね、これは。なんというか、見終わったあとはすっきりします。同じモーガン・フリーマンでも「セブン」とはえらい違いです。これ、むっちゃ不愉快。いや、映画そのものはそこそこいいのですけど。

 「ショーシャンク・・」は簡単に言うと脱獄の話なんですけど、「パビヨン」みたいな執念ものではなくて、そこに描かれている人間像がいいのですね。希望を失わない主人公もいいですし、あとで「はーん、そういうことだったの」みたいなストーリー展開の仕掛けも上手です。脚本がいいということでしょうか。

 しかし、それよりなによりモーガン・フリーマンがいいのです。刑務所を出所して、言われていた場所へ出向くシーンがあります。黒曜石の下にあるなにかを探しに行くのですね。いやぁ、もう完全に主人公に感情移入してしまってますから、ドキドキしますねぇ。うーん、ここが一番いいところです。

 どうでもいいんだけど、悪い刑務所所長さん、なんでか昔の学園ドラマで教頭先生をよくしていた穂積隆信さんと似てるような・・・。
 「映画の王道」という感じでAです。+まではつけませんけど。
                                                              98/11/21


「恋愛小説家」




 ジャック・ニコルソンのちょっとした恋愛映画。この俳優さんは「カッコーの巣の上で」(高校時代に見て涙しました)以来、ずっと注目している人ですが、まあバットマンの悪役から偏屈な小説家からなんでもできますなぁ。すごい。

 お話は毒舌で変人の独身の小説家が、ウェイトレスに愛を告白するというそれだけのことです。ちょっと考えると「あんた、いったいどういう生き方をしてきたの・・。」とか突っ込みたくなるんだけれど、そうそう深く考える作品でもないですね。

 映画の終盤にこの映画の頂点となる会話があります。

男「それから薬を飲むようになった。」
女「どうしてそれが誉め言葉なの?」
男「いい人になりたくなった。」

これだけなんですけどね。でも、やっぱりここが頂点という感じがします。あとは予定調和的に物語が流れていくという感じですね。
悪くないですよ、ジャック・ニコルソン。さすがです。
                                                      98/11/15


「病院で死ぬということ」(市川準監督)

格付けB+

 これは同名のベストセラーのエッセイを市川準監督が映画化したもので、以前にも一度書いています。とても静かな映画で、芝居くさい演技はなくて、ごく普通っぽいホスビスでの状況をわざと普通っぽく撮ってます。見る人によって印象が違う映画だと思います。

 私がこれを見て心に響くのは自分自身の経験と重なるところがあるからです。7年ほど前になりますが、母を亡くしました。長く闘病生活を続けていましたが、当初から母自身の希望で自分の病状については医師から全面的に告知を受け、その上で子どもたちには泣き言一つ言わずに実に「堂々と」死んでいきました。東京の病院に治療のために一時期入院したこともありましたが、体調のよい時はなるべく自宅で過ごす事を望み、入院と退院を何度も繰り返しながら、最後は病院で亡くなりました。このあたりは思いが重なるところがあります。

 亡くなった直後に廊下ですれ違った看護婦さんが「立派でしたよ。」と一言言ってくれました。この「立派」さは、誇りでもあり、また「かなわんなぁ・・。」という思いでもあります。入院中の比較的体調のよい時でしたが、同じ入院している患者さんと自分のお墓を買う話をサバサバした感じで喋っている、もうその時は自分の死期というのを十分にわかってるわけです。「あそこは、なかなか眺めもよくていいのよ。家からも近いし〜」、こらこらー、リアクションとれんだろうが、そんな話されても・・・。

 河合隼雄とかユングの関係の本なども好きでよく読んでましたが、入院中に自分が見た壮大な物語の話なんかもしてました。

重心教育部にいると、毎年のように子どもたちの死と向きあわなければいけないことがあります。「学校」という場ではこれはあまりないでしょう。だから、重心教育部の教員に求められる資質の一つは「どう子ども達の死と向き合えるか。」ということがあるわけです。それぞれの場合によって色々と受け止め方の違いというのはあるわけですが、とりわけ自分が毎日直接担当していた子どもが急に亡くなったりすると、これはもうひどいショックというか無力感、脱力感が来ます。これは繕ってみても無理なわけで、かなり深いところでこたえます。とりわけ、その「覚悟」がさほどない場合は厳しいものがありました。その子があとで夢の中に出てきて、ちゃんと私自身のケアをしてくれましたが。

 ということで、全然話がずれとりますが、「病院で死ぬということ」に出てくるようなホスピスというものも終末期医療のあり方の一つとして今後量的に質的にさらに広がると思います。それと同時に在宅医療、在宅ケアというものも非常に重要になってくるでしょう。その時の一つのキーとなるポイントは、情報通信、マルチメディアです。これは直接的な医療(的な診断や治療)という面でもですし、人のコミュニケーションという面でもです。

98/10/24


4

「隠し砦の三悪人」(黒沢 明監督)

A+


 黒沢監督が亡くなりました。やはり「世界の黒沢」だと思っています。

 もちろん「七人の侍」はいいですし、「羅生門」もいいです。しかし、私が一番好きなのがこの作品。一言で言うと「疾風怒濤娯楽時代劇巨編」っていう感じですか。

 私はこの作品の三船さんを見ていると「スクリーン上での永遠」という事をいつも感じてしまいます。そう感じるのは、この作品と、あと「ローマの休日」ぐらいですね。ほんと、存在感、パワーがすごいんだなぁ。かっこいいし。

 また、脚本がいいんです、見ていて面白い。モノクロだけど古さを感じないし、現在、質的にこれだけのものはできんでしょう、はっきり言って。

 お話は、三船さんの侍とお姫様たちの一行が敵中を突破していくというもの。この中の千秋実さんと藤原釜足さんが扮した農民役は、のちのスター・ウオーズのC3POとR2D2のモデルとなったというのはよく知られた話らしいですね。変に説教くさくなくて、実にスカッと楽しく見られるところがいいです。洋画で私のお気に入りの「明日に向かって撃て」ともちょっとだけ似てるかな。

98/10/27



「マンハッタン」(ウディ・アレン)


A+


 なんか、ランクが高いものばかりになってますが・・・。最初に書くのは好きなものになりがちなのでしょうがない。

 ヴティ・アレンは「アニー・ホール」も悪くないですし、「カイロの紫のバラ」なんていうのもとても好きです。でもベストというとこれになります。モノクロの作品で、テレビのディレクターだかなんだかをしているだるーい中年おじさんがウッディ・アレンですね。理屈ばっかりこくくせに、あれもこれもうまくいかなくてイライラ状態。この描写がなかなかいいんだなぁ。体育会系ののりの人には合わないかもしれないが、私はすごく共感します。音楽もいいし、一つ一つのニューヨークの風景描写がまたいい。

 ラストシーンは旅立っていこうとする若い恋人に語りかけるシーンなんですけど、なんか涙出ましたね。

 女の人はこれをどう見るのか、コメントを聞きたいです。

98/11/08


「東京日和」(竹中直人主演、監督)

 B+


 比較的最近見た邦画の中で印象に残る作品。評価はやや甘い、というか、好みがはいってます。

 写真家荒木と妻を描いた作品で、荒木自身の写真集が原作になっています。写真集を見ていると、「あ、これはあの写真、このシーンはあれ」っていうのがよくわかるんですね。荒木を演じているのが竹中直人で、奥さんが中山美穂。中山美穂ってなんかミスマッチだと思うでしょう。ところがこれがなかなかいいんだなぁ。岩井監督の「ラブレター」以降は女優としての存在感が増している感じがしますね。

 作品全体は監督の荒木への想いみたいなのが非常によく出ています。ちょっときれいに撮りすぎという感じはしましたけど。

 映画の原作の一つとなつた写真集「センチメンタルな旅・冬の旅」は非常に強烈な印象を残すすばらしい写真集です。機会があったらぜひ見てほしいと思います。
                                                                   98/11/08


「タイタニック」

B−

 話題の作品。まあ、見ておいてもいいんじゃないかという感じでB。いや、マイナスつき。

 なんせセットがすごいわね、セットが。お金かかってますなぁ。考証的にも正確にやってるんでしょうね。

 肝心の内容の方はというと、ポセイドンアドベンチャーなんか恋愛映画なんかどっちなんじゃーい?っていう感じ。外国の映画によくあるんですが、どうも感情移入できないというか、「君たち、なんですぐにそういうことになってしまうわけですか・・・。」というケースにあてはまります。気持ちの流れがわからないというか、ついていけない。

 一つ一つの絵は丁寧で、船の舳先で両手を広げるシーンというのは、「女性がその縛られた境遇から男性の助けを借りて解き放たれ、空を自由に飛びまわる。」ってな感じで悪くはないのですが・・・・。

 ラストは「やっぱり」という感じではありますが、ちょっといいですね。続編はやめてもらいたいです、これは特に。
                                                                     98/11/08


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