3480ジェイ・エス・ビー 株主総会参加報告と提言(3)

全体として、ここは、四季報では【快走】と書かれているように、事業内容、業績そのものは着実に前進し成長もしているのに対して、上場企業としてその株式の魅力を高めることが十分にできていないと感じます。

それは

・前述したように株主還元の水準が低い。総還元性向が20%で配当はそのうち半分程度。社長自ら「低い」と認める水準。

業績が安定的で、かつプライム上場企業で、EPSが300円以上で、配当は35円程度しか出さない、そういう企業は他にどこがあるでしょうか?。

例えば東証一部で、EPSが350円以上あるのに、配当は40円以下のところは?。

あれこれ特殊要因でこのスクリーニングにひっかかっているところもあり、J.S.Bと比較的似ているように見えるのは実際のところはドラッグストアのクスリのアオキぐらいでしょうか。それだけまれだということになります。

やはりこれは配当の大幅増額は必要でしょう。

・プライム上場の流動性の基準を満たすために株式公募、売出があり、既存株主にとっては希薄化の悪影響がある。

9%程度の希薄化になるでしょうか。公募価格が3,540円。9月以降、株価はこれを上回ることはほとんどありません。無論、市場全体の動きとの関わり等もありますが、株主還元に水準が低い上に新株発行での1株利益の希薄化があり、株価は公募価格をほとんど上回れない、業績の堅調さと比較してこの株式、株価の状況というのは対照的ですらあります。

資金調達だけであれば、あえて新株を発行する必要性がどこまであったか疑問です。この金利の状況で、ここほど堅調に事業を展開していれば金融機関も低利での融資を喜んでしてくれるでしょう。素人考えですが、例えば、REITに大きめの自社物件でも売却して、そこの管理は引き続き自社で継続し、得た資金を新規物件の開発に活用するような方法もありそうに思うのですが。

IRの課題については

・知名度が低い。J.S.Bの社名だけですぐにピンとくる人は非常に少ないのが現状。

・賃貸不動産の管理では成長性は乏しく、学生相手では若年層人口の減少でパイが縮小するなどととらえられがち。

堅実な業績、一定の成長性、参入障壁、意外にすぐ減少するわけではない学生数などの諸点はすぐには理解されにくい。

・株主優待の設定もなく、個人としては投資対象として魅力に欠ける。

といったことがあります。

なので、この逆というか、この課題に即した対応を総合的にすすめればいいわけです。

・自社の強み、独自性、参入障壁、とりまく環境などに特化し、それらを積極的に強調した形でのIRの取り組みの徹底強化。

現状、ネットやIRセミナー等でのプレゼンの内容は包括的すぎてアピール度が弱いです。もっと工夫する余地はたくさんありそうです。まずトップが熱意をもって伝えることも重要ですし、いろんなステークホルダーの人の具体的な声を拾い上げる(物件利用している学生やその保護者、物件オーナーも大学関係者など)とか、旗艦的物件や新規物件の具体的な紹介や他社との違いとか、いろんな切り口での工夫ができるでしょう。IRについてのコンサルでも入れて、手間もお金もかけて工夫してみるのもよいかもしれません。

・株主優待は個人的にはポートフォリオの投資対象としている銘柄についてはほぼどうでもよいと思っていますが、ここの場合、IRのひとつとして積極的に導入を検討したらいいと思います。

京都が本社である、多くの学生が利用している、大学当局や大学生協との関係が深い、そうしたことを生かしたような独自性があり、注目されやすく、面白い、そうした優待設定の工夫はできるはずです。例えば、実際に物件を利用している学生にとってメリットがある優待は考えられないか、一親等か二親等の人が株主となった場合に利用できる優待とか。京都のもの、各大学と関わりがあるものなどのオリジナルの優待カタログとかはできないか。単にクオカードを配るとか優待だけ豪華で配当はしょぼいとかいうことではない、なにか工夫した優待の設定というのができるはずです。なお、毎日コムネットは社外取締役の白石氏のところのベネフィットワンのサービスを優待として設定しています。これも選択できるようにするとよいかもしれません。

単に優待だけを求めるようなことではなく、中長期で株主になってほしいということなら(以前にIRに聞いてみた時にそのようなニュアンスのコメントあり)、最初だけ全株主対象で、以後は継続保有の株主だけの優待に移行するという形もありましょう。最近優待新設のアナウンスのあった滋賀銀行のように、いきなり長期保有条件をつけるというのも一つの方法ではあります。

・あえての株式分割

現状、株価は3000円以下で東証の示す1単位50万未満ではありますが、この30万前後というのは必ずしも個人投資家にとっては売買しやすいということでもないでしょう。あえてここで1:2の分割をして売買しやすくし、流動性を向上させるというのもあるかと思います。

こうした諸点、還元性向の水準向上(せめて30%に)、大幅な増配、IRのプレゼン等の徹底的な研究と実施、株主優待の設定、株式分割などを総合的に実施すれば、堅調な業績と相まって、株価水準もかわってくることと思います。無論、本業そのものは計画どおり着実に前進させるということが大前提です。

また本業とは多少異なる、こうした資本市場での対応については主幹事証券の果たす役割もかなり大きいと思うのですが、そのあたりはどうなのかなぁ・・。ここは三菱UFJモルガン・スタンレーですね。

実は投資対象としては、こういう課題があるところの方が面白いというところもあります。課題が解決されれば、それに即してポジティブな株価の動きとなる可能性もあるからです。今は現状の課題がそのままの状態を反映した株価でしかないですから。

ただ、それには課題を課題として認識して解決していこうとする方向性が企業にあるのか、基本的な企業のポテンシャルはどうなのかといった評価が前提になりますが。

さて、来年の株主総会も今年と同じような要望を伝えなければならないか、あるいは評価できる点がたくさん出てくるか、あるいは株主総会に出席する権利がないか・・・。楽しみにしておきましょう。

ここのURLは会社のIRの方にもお知らせしておきましょうか。

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