「ラストレター」 「染みる」

「ラストレター」 「染みる」

「染みる」

時間軸なり、登場人物の年齢とか状況が自分自身と重ねやすい部分があつたりする作品は、その作品から自分自身のいろんな経験とか思い出とか悔恨とかが浮かび上がってくることがあります。この作品はそういうところがあって、それが「染みる」という感覚につながっています。

自分自身がこう感じる理由は「手紙」です。

作品の中で高校時代に主人公が出したラブレターを、亡くなった恋人がすごく大事にずっと持っていて、その手紙の束が祭壇の下においてあるというシーンがあります。

ここから思い出したのが自分自身の経験、思い出。

もう30年くらい前、20代の中頃から後半にかけて、仕事がうまくいかずにメンタル的にも肉体的にも厳しい状況となり、一度そこから退避しつつ、またそこから戻ってくるような経験をしました。

当時、いろんな人に助けてもらったのですが、その時に一週間か隔週ぐらいで、遠くにいる人にその時の自分の状況や気持ちなどをずっと手紙に書いて送っていたことがあります。
で、その手紙への返信がほぼ同じような間隔で届いていました。

その手紙を書くことと、返信を読むこと、そのことが当時の自分自身をかなり支えていたようなところがあるのです。

後日、その人の家に行って自分が出したその手紙の束を見る機会というのがありました。全部読み返したのではなく、一部をちょっと読んだだけですが、その時の感想は「うん、よく書けている」というものでした。素直にそのまま、当時の自分自身のことが綴られていました。

当時はメールやSNSはありませんでした。当時、そういうコミュニケーション手段があったら、自分は今、ここにこうしていることはなかったかもしれないとちょっと思うことがあります。あ、そういえば、電話をして、本人だと思って喋りだしたら、少ししてそれが妹さんだったとわかり、すごく恥ずかしかったこともありました。

とかいうようなあれこれの経験というものはそれぞれの人の中にあるものだと思います。この作品はそういうもの、ことを浮かび上がらせてくれる効果があると思います。

岩井俊二のティストが好きでしたら、ぜひ見てください。

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