特別支援教育 7 「楽しむ」はねらいではないのか?

 「全体像と課題」の続きを書いていないのですが、別のことを。

個別の指導計画で詳細の指導のねらいや手立てを記載するようになって、そこに「楽しむ」というねらい
を書くと、「楽しむ」というのはねらいとしては適切ではないからということで、書き直しの指導や指示が
される場合があったと聞きます。私自身のことではなく伝聞で、現状がどのようになっているかはわかりませんが。

 どうなんでしょうね。「楽しむ」というのは、ねらいとしては適切ではないのでしょうか。

 結論から言えば「楽しむ」というのはねらいとして適切ではないどころか、特別支援学校における極めて重要なねらいの中心の一つなのではないでしょうか。

 学校が楽しくなくてどうする?、学校生活が楽しいものでなくてどうするのでしょうか?。

 学校というのは、何か厳しい訓練だか練習だかを黙々とやって、その取り組んでいることができるようになったらそれでいいのでしょうか?。それがねらいの中心なのか?。

 じゃあ、毎日、何か楽しいことばかりをして、ニコニコ笑って過ごせたら、それでいいの?。それで「楽しむ」ということが達成されていたらいいの?。

 と、まあ、わざと極論というか、単純化させて書きましたが。

 つまりは「楽しむ」というのは、基本的にとても大切なねらいであり、視点であり、大事にしなければいけないことである。だから、ねらいとして極めて重要である。

 だけど、個々の子どもたちにとって、ただ「楽しむ」というねらいを達成して、評価が「楽しめた」、これでは中味、意味が全然わからない。

 じゃあ、どうするかというと、個々の子ども、その子どもにとって「楽しむ」というのはどういうことなのか?。その中味、内容はなんなのかということをまず考え、
次の、ある授業で「楽しむ」というねらいを設定するのであれば、その授業の中でその子にとって「楽しむ」というのはどんなことなのかを具体的にし、
当然、それにそった具体的な内容が設定されていなければなない。

 そうじゃなかったら「楽しむ」というねらいは、ねらいとしては適切ではなくなってしまいます。

 例えば、まず、強い緊張が入ったり、泣くことが続いたり、深く寝てしまったりして、なかなかいろいろなはたらきかけをゆったりと受け止められないことか多い子ども
さんだったら、まず適度に覚醒し落ち着いた状態で様々なはたらきかけをうけとめてほしいわけですね。それが、この子どもにとっての「楽しむ」ということ。

 だったら、それは「楽しむ」ではなくて、その授業の中で、あるいは日課の中で取り組んでいることそのものをねらいとして記述したらいいやん。

 いや、それでもいいのですけど、というか、、その授業では具体的にはそうなるのですけど、そうして落ち着いてはたらきかけを受け止めるところから、この子に「これが心地いい」「これが緊張せずに受け止められる。」
「これが面白い。」「これが好き。」っていうところに広げていきたい、そういうふうに進めていきたいわけです。

 で、そういうものが確立とまではいかなくても、そうした芽が見えてきたら、それはやはりその子にとっての「楽しむ」ということになるだろうと。

 だから、大きな意味で「楽しむ」というのはねらいとしては、はずせないというか、、基本的に大事にする点なのですよ、となるわけです。

 それは、具体的には「あたたかいお湯の温度や感触」かもしれない、「ゆったりしたいつも聞く楽器での演奏」かもしれない、「抱っこでの揺れや細かい振動」みたいなことかもしれない、いずれにしろ、まずは、意図して
考えられた感覚へのはたらきかけというところからまずはじまる。

 これは、認識面でも重度な子どもたちの場合で、発達や障害の実態が異なれば、当然「楽しむ」ことの中味、内容、意味は個々に異なってきます。

 だから、一回とばした記事と関連づけて言うなら、やはり個々の授業でのねらいや取り組み内容は原則としてその子の「全体像と課題」に沿ったものになってなければいけない、必然的にそのように組織されるべきもので
あるということですね。

 ちょっと舌足らずか。

 これと意味的には似たようなことで「指導方法を優先させるな!」というのもよく感じていました。これもまた書きます。

 

特別支援教育 7 「楽しむ」はねらいではないのか?” に対して1件のコメントがあります。

  1. きっしゃーん より:

    書面の裏表
     裏も合わせて真面目な「個別支援教育」になる筈。これは、我が持論で、あくまでも「裏書面」です。どちらが主となるかは、数量と教育観の「落差」になると感じています。
     重度のこどもたちには、「裏」が重要かも。
    偉そうな言い方になってしまいました。ご容赦願います。

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