適応的市場仮説(3)

いよいよ本の主題の部分に入ってきました。

「適応的市場仮説」の「適応」とは、つまりは進化論的ということです。

人間は環境に適応することで、環境に適応した個体が生き残りやすく、そうしたことを通じて進化をしてきました。というか、そう考えるのが進化論。

であるなら、人間の行動により形成される市場の動きも、また進化論的もつまり「適応的」だろうと考えるのは当然といえば当然かもしれません。

効率的市場仮説は全体として合理的に行動する人間というものを想定しています。それが前提にならないと「効率的」にならないですから。そして多くの場面でそれは全体として見れば機能している、あてはまっているように見える場面は多いのです。

逆に行動経済学の様々な知見は、人間は合理的に行動するとは限らない、むしろそうではないことが普通であるような状況、場面があることを具体的に指摘してきました。これがあてはまるのであれば、市場が効率的であるはずがないということになります。

ですが、行動経済学はどちらかといえば現象面的にそのことを指摘し明らかにすることに力が注がれ、なぜそうなのか、なぜ人間は合理的な行動をとらないことがあるのかという原因や理由についてはあまり重視しない、というか指摘してこなった印象があります。

そこをつなぐのがこの「適応的」という発想、考え方です。人間が環境に適応的に行動するというのはどういうことか。それは必ずしも全体が同じ方向にその時々で合理的に見える行動をとるようなことではなく、それぞれがかなのバラバラに、合理的ではないと見えるような対応をとることも含めて、「適応」していこうというのが当たり前というか、それが生存、生き残るためには必要なことでもある、それが適応的市場仮説の考え方です。

だって環境は変化しますから。変化する環境に対応するためには変化する以前の環境への対応のままでいるのではなく、そこからの変化が迫られます。

ある時点で合理的に見える特定の方法にばかり集中していると、それがあてはまらなくなった時に極めて甚大な被害を多くの比率の人が受けることになる、それは実は生存に適した方法、適応にはなっていない。なので効率的市場仮説は進化論的には、また生き残るために対応ということで考えるならば、多くの場面であてはまることが多かったとしても、「正解」ではないというわけです。

なるほど!それは確かにそうかもしれません。

さらに読み進めてみます。

つづく。

 

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