黄檗山宝蔵院 重文の鉄眼一切経版木がえらいことに!!(3)

建物が古く耐震基準上の問題もあり、空調も整っていないということは書きました。で、この収蔵庫、重要文化財がまさに山積み状態になっているにも関わらず、特にセコムなどのセキュリティがなされていることもありません。まずこの保管庫のハード面で問題があります。

版木と実際に刷ったものです。少し前まではこの場所で実際に刷る作業も行われていたということです。

なるほど、黄色い刷ったものの方は原稿用紙っぽいです。

重要文化財指定の書類ですが、ここ、版木の枚数をよく見てください。48,275枚です。ただ、実際の版木は6万枚以上あります。で、この中の具体的にどれが重要文化財に指定されたもので、どれがそうでないのか、現在も判然としない部分がかなりあるということでした。そんなことってある?。どれが重文なのかわからないところがあるっていうことでしょう。それ、文化財「指定」になってませんやん。指定した方として調査は必要でしょう、これ。

収蔵庫の中はこんな感じで2つの階にわたってスチールラックに版木が積み上げられています。お経ごとに順番に並べて整理されていますが、どんどん積み上げていく形で、中にはいたみとか変形とかが出ているものもあったりするでしょうし、そもそも何度も刷って摩耗等しているものもありそうです。

上の階も同様にものすごい数の版木があります。ほこりも降り積もっており、保存状態はよいとは言えません。というか、悪いです。

見てわかるでしょうか、これ、写真の撮り方でそう見えるのではなく、実際にスチールラックがゆがんでいるものがあったりするのです。

まあ、こうしたところに管理者、案内者なしで勝手に見学者に入られては、管理上も安全上も大きな問題があります。全部、これ、木ですから燃えやすいものでしょう。

実際、他所ではこうした版木は焚き木のような用途で使われたこともあったようです。

上下に版がある版木が保護材もなにもなしに、そのままの状態で積み上げられています。6万ですから膨大な数です。

千手観音でしょうか。版木の彫り込みがすごいです。なぜかこれは重要文化財指定ではないそうです。

刷ったものがこれ。ポスター全紙ぐらいの大きさがあります。これ、色なども工夫して刷り上げたものがあったら欲しいです。

こちらは吉野のヤマザクラを版木の材料にすることができたことと関わっての吉野奉行との関わりのお話。

江戸時代初期といえばまだ浮世絵も版画ではなく肉筆の時代。その頃に国内でこれだけ大量の印刷物のもととなるお経の版木がつくられ印刷され、今までその膨大な数の版木が保存され続けているというのは文化財としての価値は大きいでしょ。韓国では同様の版木は国宝的扱いできちんと保管されているということです。

ところが、ここの保存状態は課題が非常に多くて心配な状態です。そもそも、細かなきっちりした調査もされないまま、上記の枚数が重要文化財指定となっています。

そうした現状を憂えていることもあって、今日のようなプロジェクトが実施されています。寺そばのラーメン企画を開始された意味もここにあります。

こうしたものは、お金と時間があればきちんと調査をしてデジタルアーカイブの形にし、多くの人が利用しまた調査研究ができるようにすることが望ましいです。本来それはお寺自身の役割であると同時に、国家として取り組むべき内容でもあるでしょう。

実際、お寺としては国などへも様々なはたらきかけをしているようですが、まだ具体的にそれが結実してなにかが動き出すところまでは至っていません。

うーん、クラウドファンディングとかを活用して、小さなことからでもなにかできないかなとか思いますが・・・。寄付すると、ここの版木で刷った般若心経がもらえるとか、あるいはさきほどの大判の千手観音をきれいに刷ったものがもらえるとか、なにか特典があるといいですね。

また、こうしたプロジェクトではない、もっと簡易的な形で収蔵庫のみの見学ができ案内をしてくれるような日も増えるといいのですが。

いろいろ勉強になり考えさせられた今日の企画でした。またラーメンの味が変わった夏に行ってみましょう。

おわり。

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