エンターテインメントとしての株主総会 7794イーディーピー 出荷「自主」停止の状況とその理解

イーディーピーは現在、主力の宝飾用の種結晶の輸出を「自主」的に停止、保留する対応をとっています。その関係のリリースが下記。

輸出貿易管理令の一部を改正する政令の施行による影響について

上記ではさらっと書かれていますが、同社の売上のほとんどを占める主力製品の出荷を自ら停止するというのは尋常ならざる状況で、株主総会でもこの点について、質問があれこれ出されていました。リリースの文言は以下のようになっています。

輸出貿易管理令の一部を改正する政令の施行による影響について

経済産業省は、経済安全保障強化のため、「輸出貿易管理令の一部を改正する政令」を制定し、2022年12月6日に施行され、その中に規制対象として半導体基板としての三酸化二ガリウム(Ga203)とダイヤモンドが追加されました。

当社は、研究用基板のみならず主力製品の種結晶等についても、改正直後から関係機関や当局とコミュニケーションをとり、改正後の法令に則した対応等について確認をおこなって来ました。現時点ではこれらの取り扱いに関する当局の判断が未到着の状況であるため、2023年4月以降、一時的に製品の海外出荷を保留する対応を行いました。

ユーザーは引き続き当社製品の出荷を待っております。現在進めている当局とのコミュニケーションにより、当局による法令に則した対応が確認でき次第、製品の海外への出荷を再開致します。今後の状況により、当社の2024年3月期第1四半期会計期間及びそれ以降の業績に重要な影響を及ぼす可能性がありますが、詳細が判明次第あらためてお知らせいたします。

以下の内容は当方の理解のため、実際このとおりかどうかはわからず、独自の解釈となっている部分もあります。

つまり
・2022.12の政令の施行以降2023.3までは会社は海外出荷を行っている。この時点までは会社は宝飾用の種結晶は規制対象には該当しないと認識していた。

4月以前のところで会社の判断と当局の判断に違いがあることが明確になった。つまり、当局は、少なくとも、明確に宝飾用の種結晶のすべてまでが規制対象になるとまでの判断にまでは至っていないとしても、その可能性は否定できないという見解であった(ある)と思われる。

・イーディーピーとしては今後、自社判断のみで輸出を再開することはない。弁護士とも相談し、最悪の状況にならないような対応をとっている。

・ここでいう最悪とは、自主的な判断で輸出し、それが明確な規制違反とされ、全面的に輸出出荷を禁止されさらに処分があるような事態に陥ることだろう。

・当局の明確な見解は示されていない。会社として避けたいのは当然全面的な輸出禁止であり、もっとも望ましいのは全面的な輸出解禁。

・当局の明確な見解が示されるのにかなり時間がかかっている感じがする。というのは「半導体基板としての三酸化二ガリウム(Ga203)とダイヤモンド」とは何かについての明確な定義や解釈がないからで、こうしたことに対する判断が難しいという面があるからだろうか。当局の中でも判断が一枚岩ではないところがあるのかもしれない。

・単純に考えると、宝飾用の種結晶はそのままでは半導体基板等には使えない。というのは、宝飾用の種結晶としてはイーディーピーは大型のものを出荷しているが、それはそのまま半導体基板として使えるような大きさのものにはなっていないから。逆に言えば、半導体基板に使うことに支障がないような大きさのダイヤモンドの基盤を作成することそのものがここの課題というか、そもそものここの出発点になっている。

・ただ、半導体基板用も宝飾用種結晶も同じ人工ダイヤモンドではあり、その成分や組織はサイズは異なるが同一のものとも考えられ、研究用途などでは小型の人工ダイヤモンドの結晶を組み合わせ接合するようなことで半導体基板の研究に活用するようなことが可能かもしれない。

・幅広く解釈すれば宝飾用種結晶も「半導体基板としての三酸化二ガリウム(Ga203)とダイヤモンド」に含まれるとの解釈もできるかもしれない。

・但し、政令でとりわけ意識されている対象国は中国ということだろう。輸出全般ではなく、中国以外の欧米諸国への輸出は特に問題がないかもしれない。問題ない対象にインドも含まれるかどうかはよくわからない。イーディーピーの主たる輸出対象国は欧米、インドなどとなっている。

国、地域を限定して宝飾用種結晶の輸出は問題ないとの見解が内々示される可能性は高いように思う(憶測)。

・顧客に宝飾用以外に転用しない等の確認、誓約書でも取ればどうかと聞いてみたが、そのようなことは難しそうという回答だった。ただ、軍事用に転用しないといった契約はしているようだ。顧客の行動を制約するような契約は難しい面があるのだろう。が、顧客が欲しいのは宝飾用の種結晶だろうから、契約の仕方、内容を工夫し輸出しやすいような条件を整えるようなことは可能性があるのかもしれないと感じた。

・当局しては全面的な輸出禁止措置によってイーディーピーを「追い込む」ようなことは本意ではなく、世界的に見てもトップレベルにある人工ダイヤモンドの研究開発をすすめている企業を育成しようとするのが基本的なスタンスではあろう。政令で規制対象となること自体、ここがてがける事業の可能性の反映とも考えられる。

・ただ出荷停止によ第一四半期はろくに売上が立たない状況となっており、目先の業績に対する悪影響は大きく、それがさらに伸びる可能性はある。
逆に輸出再開となれば停止されていた出荷が一気に進み、ここまでのマイナス分を一気に取り戻すような可能性もある。なお、業績と関係がある為替レートは当初の想定よりは円安で推移しており、業績へはポジティブな影響が考えられる。

というようなことを株主総会の質疑などから考えました。

ある意味、出荷のほとんどが停止となっており、その再開の目処も明確ではない企業の株価が、今日の終値でで2,270円です。全体の地合いもありますが+63円でした。
いつ輸出再開のリリースがあるかもしれず、そうなると株価も反騰する可能性があり、この状況でも株価が一気に下落するような状況にはなっていません。

ここは既に投資元本は回収している「恩株」銘柄でもありますし、気長に見ていきましょうか。

とりあえず株主総会関係のこのシリーズは終了。またIRにあれこれ聞いてみることもあると思いますので、なにかわかったら続報を書きます。

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