IPOの経済分析: 過小値付けの謎を解く(3)結論

IPOの経済分析: 過小値付けの謎を解く(3)結論

本書の問題意識と結論

IPOがBB方式になってから、初期収益率(初値高騰率)が高くなっている。なんでか?。BB方式は主幹事証券が仮条件の決定や公開価格の決定、また、株式の配分について強い権限を持つ。日本の場合、需要が強くても、仮条件を超える公開価格になることはなくて、上限に張り付きになる。公開企業や株式を売出しする株主にとっては公開価格は高い方がいいが、主幹事は安い株価設定にして、有力顧客にこれを配分し、営業につなげようとすることになりがち。

割安な公開価格を設定して、それを有力顧客に配分するような形の何が問題か?。3つあげてます。

・健全な個人投資家の育成が阻害される。

なんでか?。

証券会社からIPO株の割り当てを受けて公開初日に売り抜けようとする短期利得目的の投資家公開初日に売り抜けようとする短期利得目的の投資家ばかりが参入し、
結果として初値天井を招くような株式に対して、長期保有目的の投資家が魅力を感じないから。

・既存株主に多大な機会損失を被らせるという意味で、企業の株主価値最大化が阻害される。

・VCの出資意欲がそがれる。
売出し時に低い評価して受けないので、保有株式を十分に回収できないから。

では、どうする?。

仮条件後の公開価格決定については需要調査に基づいて、上にも下にも仮条件を超える設定をしてもよいというようにする。

そのためには、強制力をもたせる形で

価格帯ごとの集計需要量を公表する、
最多価格帯が仮条件の上限ないし下限と一致した場合はそれを超えた水準で公開価格を決定する、
あわせてその水準を選択した理由を開示する
というようにする。

まあ、全体として、このような主張であり、結論です。

どうも違和感あり そもそもの問題意識とその弊害について

この内容、全体として主張の筋道はわからないことはありません。

が、どうも「IPO株の割り当てを受けて公開初日に売り抜けようとする短期利得目的の投資家公開初日に売り抜けようとする短期利得目的の投資家」代表としては、感覚的にずれている感じがします。

まず、公開価格の決定についてはですが、ここは主幹事としては、方向性として割安な設定にして、それを営業に活用し顧客に配分したいと考えるのはわかります。

が、公開価格の設定は、そもそも、そんなに極端に割安な方向に設定されていているのかどうか。BB方式になって初期収益率が高いのは公開価格設定が必要以上に割安だからか。んー、これはそう簡単には結論づけられない、もった幅広い考察が必要ではないかなー。

例えば、高い成長性が期待される小型株の公開が多くなると、初値騰落率は高くなります。どういう規模のどういう事業内容で、どういう業績の企業が株式公開をしていて、その初値騰落率はどうなのかなどの分析がいると思われます。

で、「適正」な公開価格の設定というのは非常に難しい。

赤字や、黒字化ししたばかりの企業のバリエーションというのをどう考えたらいいのか?など、なかなか「正解」というのは出しにくかったりします。割安すぎる公開価格決定の根拠というのがよくわからない。

また、
「IPO株の割り当てを受けて公開初日に売り抜けようとする短期利得目的の投資家公開初日に売り抜けようとする短期利得目的の投資家ばかりが参入」
しただけでは初値は高騰しません。公開価格よりもかなり高い初値でも買うという投資家がどうしても必要です。「結果として初値天井」になるとしたら、それは、その高値を買っていった投資家の側の「責任」でしょう。

で、全体として、公開当初は大きく株価が動くことはあっても、それはかなり早い期間で「効率的」な株価に収斂されることが多い。

となれば、このこと自体(当初の割安な公開価格の設定)はそんなに大きな問題にはならないのではないかとも思われます。

需要をもとにして仮条件の上限、下限を超えるような公開価格設定がされてもよいということには異論はないですが、どうも、そもそもの問題意識及び、現状の弊害についての認識について、何か感覚的にずれているという印象がぬぐえなかったです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です