ビジネスエリートになるための教養としての投資

図書館本。これはリクエストしたら買ってくれました。投信の「おおぶね」シリーズの運用に携わる奥野一成氏の本です。基本的に長期での投資をすすめている内容です。

別に短期的な売買、トレードを否定しているわけではないですが、投資と投機の意味の違いについてはわかりやすく丁寧に言及されています。

興味深いのは、ちょっと考えると常識に反するかのように思えるものも含めて、強烈な様々の直言系のコメントがあるところで、ここらは山本潤氏の著作を思い起こさせるところもあります。

例えば・・・。
P167
「「だから、もし日本企業に投資するのであれば、銘柄を厳選しなければなりません。少なくともTOPIXのような、市場全体を買うインデックスファンドへの投資は、日本株に関して言えば全く無意味です。日経平均株価指数は企業の選別度合いという意味では少しはましかもしれませんが、やはり参入障壁を持たない企業が多数含まれています。
最近、インデックスファンドへの関心が高まっているようですが、これらの長期的に利益を増やすことが出来ない企業が多数含まれているインデックスのファンドを買うのは、いくら長期投資を心掛けたとしても、時間の無駄以外の何者でもないことを申し上げておきましょう。」

P176
「もうひとつ、これは個人投資家の方に多いのですかが、テクニカル分析を盲信している人。テクニカル分析というのは、過去の株価の値動きをグラフ化したものを見て、過去の値動きから将来の値動きを予測するという分析手法なのです。これは、星占いと何も変わりません。過去の値動きをたどって、過去にこういう値動きをしたから今後はこうなるなんて分かるはずがない。

P202
「PERやPBRは、いずれも株式投資をする際に重視するべき判断基準などと言われていますが、少なくとも私のこれまでの経験で言うと、ほとんど見るべき意味のない数字ということになるのです。」

P234
「ここまで個別銘柄に投資することの意義について、さまざまな観点から話をしてきたわけですが、資産形成を前提にした株式への長期投資を行うのであれば、少なくとも会計の知識は持っておいた方がよいと思います。その知識が全くないのに、ただ単にその会社のことが好きだからとか、株主優待目当てに投資するというのは、完全に間違っています。

P242
「ただ、世間でよく言われるのが「アクティブ運用はインデックス運用に勝てない」ということです。その理由して「アクティブファンドはコストが高いから」と言われますが、それは違います。そもそも本気で銘柄選びを行っていないからです。
(中略)
私に言わせれば、たとえば日本株のアクティブ運用を行うなら、銀行のように何の価値も生み出していないような業種は、最初からポートフォリオに入れません。でも、それが出来ないのが日本のアクティブ運用なのです。」

となかなか強烈です。(色、太字はこちらでつけています。)

本書の中では、参入障壁という言葉が繰り返し、繰り返し出てきます。

本書の内容の本質は、P146の以下の文言に集約されると思います。

「では、どうしたら売らずに済む会社を見つけることができるのでしょうか。私は常々、「構造的に強靭な企業」に投資しましょうと言っています。
強靭な構造とは、3つの要素に支えられています。「高い付加価値」、「高い参入障壁」、「長期潮流」です。この3つの要素を持っている会社は、構造的に極めて強靭であり、この3つの要素が弱まらない限り、その株式を保有し続けられると考えていいでしょう。」

長期での個別銘柄への投資を考え、実践しておられるのであれば、ぜひ一読をおすすしたいです。難しい数式などは一切出てこず、意識的に平易な言葉で書かれていますので、特に専門的な投資の知識がなくても、どんどん読み進められる点もよいです。そうした意味も含めての「教養としての投資」ということなんでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です