10倍株の思考法 「ビジネスモデル×企業価値」で考える株式投資入門(4)

第4章目標株価を算出する

ここは数式っぽいものやら、アルファベットやらがあれこれ登場します。かなり丁寧にアルファベットになっているところの日本語の意味などを書き入れてくれていて、いちいちこれはなんの意味だったかというのを確認しなくていいようになっているところなどはよいし、説明は丁寧なのだけれど、それでも文章系の文系人間にはなお抵抗感あり。

ここも成長率やら期待収益率やら、そうした数字の設定をどうするかによって出てくる数字は大きく異なってくるので、単に目標株価の数字を見るというより、その根拠となる前提の部分に注目するのがよいのだろうと思いました。

第5章 プロを出し抜く
ここはなぜ日本株個別銘柄投資なのかについての解説やら、IRとの対応のあり方やらが示されています。共感するところは非常に多いですかし、個人的にIRにあれこれ聞いてみたりすることもあるので、そうした面でも参考になるところがあります。

ただ、個人投資家でもプロを出し抜くことができるという例なり書籍としてよく、ピーター・リンチの「株で勝つ」が挙げられますが、日常、身の回りのあれこれの状況を株式投資のヒントにするということはよいとしても、それで実際に投資がうまくいくかどうかはわかりません。

まあ、例えば店舗の目の前のリアルタイムの状況というのは決算の数字などには反映されていませんから、そうしたところにうまく着目して投資に生かせる可能性というのはあるかもしれません。しかし、それは、様々な事を幅広く判断できる「実力」があってのことで、その目の前のことはもう周知のことかもしれませんし、逆にここだけのことで業績には影響しないことかもしれませんし、まったくどうでもいいことであったり、逆に意味を取り違えたりすることであったりするかもしれません。

個人投資家は資金面とかあるいは取引の方法や時間とか様々な面で制約がある場合も多いですが、逆に他とパフォーマンスを比較されるようなことはなく可能な範囲で自分のやりたいように運用に取り組めるという有利さもあります。うまくそうしたことを生かし、自分なりのスタイルを確立し、プロを出し抜く「プロの個人投資家」に成長していけるといいのですが・・・。

第6章 10倍株の思考法
「10倍」というのは最初から狙って取れるようなものではなく、「まとも」な企業にinvestmentの視点で中長期していたら、結果としてそうなったというような場合が多いのではないでしょうか。

分割売り上がりや「恩株」といった方法よのも、本来は「どっしり構える」のがいいとも書かれています。それはそうですが、どこまでが「どっしり」なのかの感覚や水準は人によって異なりますし、売り上がりや恩株化によってメンタル的に楽な形で投資を継続できるのであればそれも十分にありかと思います。

本書ではあまりふれられていませんが、やはり行動経済学の基礎的な知見について学んでおくは、自分の感情とか戸惑いといったものがいかにごく「普通」のことなのか
を理解するための手助けにはなりますし、陥りがちな心理的困難さを解消とまでいかなくても意識し緩和するためには役立ちます。

また、10倍を達成するためには、うまく売買するトレードよりも、企業そのものの成長による株価上昇による方が「簡単」かと思います。株式はそれ自体、基本的に成長を志向する投資対象です。他の投資対象と比較してみると、そういうものはありません。為替などは値動きとか金利云々による変動というだけのことですし、債券のリターンはあらかじめ確定しています。不動産は活用の方法等にによってリターンは異なりますが、不動産そのものが成長を志向するわけではありません。

もちろん、どの会社も成長するわけではないですが、トップはもちろん、多くのステークスホルダーが成長に向けて常時様々な努力をしている、そうした投資対象であるということはやはり基本的な「強み」なのだろうと思うし、その投資対象としての特性を生かすのであれば、やはりインデックスに投資するよりも選別した個別の企業を対象にして投資したいと思いますね。

第7章「素晴らしい企業」の選別チームをつくる
ここを読むと自分のPFはやはりどっちらかっているというか、細かい株数、金額の銘柄がかなりあって散らばりすぎているなぁということを改めて感じました。
少し整理し集中させていく方向で売買をしていこうと思います。

本書は全体として共感するところが非常に多く、納得させられる内容が多いし、同じ方向性で投資をすすめていると感じます。ただ、編集としては、内容は面白いもののかなり長文のコラムがあちこちにぶち込まれていたりして、やや読みにくい感じがするところがあります。

銘柄選択から、売却、あるいは保有を継続してのポートフォリオ運用まで、どういうプロセスでどこを大事にして進めるのがよいのか、といったことがあまく整理されていると読みやすいのですが、内容としてはそうしたことにふれられていても、編集としてはやや全体の統一性というか流れが感じにくいこともあり、そのあたりが改善点かと思います。

次はIRと株主総会とかに特化したような実践記録でも期待しておきましょうか。ありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です