7794イーディーピー 決算短信と決算説明会資料から(2)

決算短信に戻ります。文言として注目するのは「1.経営成績等の概況(1)当期の経営成績」の中の概況下記の部分。

 こうした経済情勢の中、当社製品の主要なビジネス分野であるLGD(Laboratory Grown Diamond:人工宝石)市場は、この数年継続して拡大して来たと見られます。このために、LGD製造企業は活発に設備投資を進め、新規企業も多数設立されました。

 当社はこのような状況から、2021年11月に島工場の建設を開始し、生産能力の拡大を進めてまいりました。また、本社にあった生産設備を工場に移転し、あわせて工程ごとに集中する配置に転換しました。島工場は2022年11月に稼働を開始し、工程集中による合理化も合わせ、2022年12月にはダイヤモンドの成長能力が計画通り拡大したことを確認できました。一方で、島工場の一部生産設備の納期遅延により、当初計画したすべての設備が整ったのは、2023年3月となりました。

 しかし、当事業年度第3四半期会計期間の末頃から、LGD製造企業の上記の状況から、小型宝石において供給過剰が発生しました。このため、その取引価格が、それまでのペースを上回って下落しました。当事業年度第4四半期には、LGD製造企業の中には、生産の縮小や、設備増設計画の見直しや延期をするところも出てきました。

 このようなLGD製造企業の動きは、当社の主力商品である種結晶の受注状況を大幅に変えることとなりました。それまで生産拡大を続けていました当社の大手ユーザー各社も、2023年1月以降に一旦種結晶の購入を控える動きが出てまいりました。

 当社のこれまでの種結晶売上は、数社の大手ユーザーがそのほとんどを占めていました。特に、10x10mm以上の大型種結晶については、生産量がそれほど多くなかったこともあり、ユーザーを限定していました。しかし、受注が減少した事態に対応するため営業方針の変更を行いました。それは、大手ユーザーからの小型宝石生産用種結晶
の受注減少により、今まで当社の生産能力の問題で供給することができなかったユーザーへの販売を開始し、10x10mm以上の大型種結晶については需要のある全てのユーザーに販売開始する、という方針変更を行いました。
これらの対策によって、2023年2、3月の種結晶売上は安定しました。また、10x10mm以上の種結晶の売上比率も増加し、平均単価が上がることとなりました。

まとめると、

人工ダイヤモンドの市場はここ数年成長

→整備投資もすすめられ新規企業も多数設立

→新工場建設開始、生産能力拡大

→小型宝石において供給過剰発生→取引価格が大きく下落→生産縮小、整備投資の見直し延期ね

→種結晶の購入も控えられる

→数社の大手ユーザーだけでなく、新規のユーザーへの販売を開始。大型もすべてのユーザーに販売。

ということになります。

上記の状況が業績の下方修正の原因になっているわけですが、意外感があったのは顧客の需要が短期で大きく変化することがあり、関わって製品の価格も大きく変化することがあるという点でした。

今後の見通しについては以下の記載がありすま。

(4)今後の見通し
宝石関係の有力紙「Jeweller」の2021年12月号では、LGD市場規模が2021年時点で20億ドル(130円/ドル換算で2,600億円)に達しており、今後も年率15%以上で成長する、と予測しています。このようにLGDは大きな市場を獲得し、さらに高速で市場拡大が進むと見られます。
2023年3月期第4四半期から下落した受注状況は、一時的な現象と見られ、2023年のクリスマス商戦へ向けて、夏頃から動きが活発になると予測されています。当社は既に稼働している島工場が、当初計画していた生産能力となると確認できており、既に取引を開始した新しいユーザーに対しても十分に種結晶を供給できる見込みです。


なお、経済産業省は、経済安全保障の強化のため、「輸出貿易管理令の一部を改正する政令」を制定し、2022年12月6日に施行されました。その結果、規制対象として半導体基板の三酸化二ガリウム(Ga2O3)とダイヤモンドが追加されました。当社は、当局ともコミュニケーションを取って、改正後の法令に則した対応等について調査・検討しており、適切な対応を進めてまいります。

以上の見通しから、2024年3月期の売上高は3,417百万円(当事業年度比26.2%増)を見込んでおります。2024年3月期の売上高は、当事業年度より増加する見込みですが、売上原価(製造原価)に関しては、主に2022年11月に稼働を開始しました島工場の減価償却費や人材獲得等の影響が通期で生じること、販売費及び一般管理費に関しては、主に人材確保等のための昇給や賞与増、技術開発の推進のための研究開発費の増額等を予定していることから、営業利益は1,460百万円(当事業年度比14.0%増)を見込んでおります。


営業外費用は、主に借入金の支払利息を見込んでおり、その結果、経常利益は1,457百万円(当事業年度比13.8%増)を見込んでおります。特別損益等は見込んでおらず、当期純利益は1,005百万円(当事業年度比10.6%増)を見込んでおります。また、上記から、営業利益率の見込みは42.7%となり、高収益体質が継続できると予想しております。

上記の中でのポイントは「2023年3月期第4四半期から下落した受注状況は、一時的な現象と見られ、2023年のクリスマス商戦へ向けて、夏頃から動きが活発になると予測」がそのとおりになるかどうかという点でしょう。なお、為替レートがどう推移するかも業績に影響します。想定為替レートよりも実勢為替レートが円安で推移すれば業績にはプラスです。

 ただ、基本的には外部的な要因としてはユーザーの需要の動向と製品価格の推移や製品構成比(大型の比率がさらに高まるかどうか)、内部的要因としては、生産能力の向上やさらに大型の新製品の開発や原石市場への進出がどうなるかの方が意味としてはずっと大きいでしょう。

また、売上の増加と比較して利益の増加率が低い点については、「島工場の減価償却費や人材獲得等の影響が通期で生じること、販売費及び一般管理費に関しては、主に人材確保等のための昇給や賞与増、技術開発の推進のための研究開発費の増額等を予定していること」が主因とされており、この内容は企業の現状や課題に即したもので納得できるものです。

小規模な生産設備で限られたユーザーに対して製品を供給し高い利益をあげていた企業が、生産設備を拡大し幅広いユーザーへの販売を開始する中で、とりわけ小型の製品については販売価格が低下しても、全体としての売上高は増加し、価格が高い大型の製品の比率も増加することでなお40%以上の高い利益率を保つという予想もわかりやすいものです。

従業員数も少ないことから企業規模を拡大する中では労働条件も改善しながら人材を積極的に採用していくことも重要な課題であり、研究開発を継続してすすめることはここの競争力の源泉ともなるもので極めて重要な点てもあります。

次回、資料の方を見てみます。

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