小指の思い出/夢の遊民社 1986
これはVHSのビデオを持っていて、何回か見ている作品です。1986年の公演なので、えーと、25年以上前ですね。映像は例によってやや鮮明度が劣るところがありますが、作品そのものは全く古さは感じさせません。
なお、この舞台では「妄想」という台詞がよく出てきます。これは野田さん自身、最近作の「兎、波を走る」のパンフレットの中でこの言葉についてちょっと触れているところがありました。
舞台では野田さんをはじめとして上杉祥三、段田安則など、みんな若いし、動きも激しいです。まあ、そりゃそうですね。また、野田さんの芝居でよくある形で、時間と場所が一瞬で行ったり来たりするので、話の全体像を把握するのが大変、というか結局わかりきらないところがあります。
それでも、特に後半からラストにかけての30分ぐらいの展開は、その独特の台詞、また表現、舞台装置など圧巻であり、かつ叙情的で、心に迫るものがあります。
「・・・小指にうずまく八月の糸をかみきって、正月の凧糸を天まで伸ばしたら、六月に凧糸の先を大河の河面に垂らして、アルプスを下っていきなさい。母さんが下ることのできなかったアルプスの山を、どこまでもどこまでも下っていきなさい。」
ターッ、ターッ、ターッ、ターッ、ターッ、タッ、タッ、タッ、タッ
「三月だ、僕は粕羽三月。君の少年時代だ!。」
ここはいいですね、やっぱり。次は「半神」を見ましょうか。