なかの日本成長ファンド Japan(2) 組み入れ比率トップ 2471エスプール

こちらのマンスリーレポートの中で組み入れ比率トップとしてあげられているのが2471エスプールです。

レポートの中ではまず下記のようにふれられています。

「障がい者への支援サービスのほとんどは、税金をベースにしていますが、同社の障がい者雇用支援ビジネスは民間企業が雇用主となるため税金を使いません。障がい者が有機農法や自然農法を学び、その成果物を社食の食材に活用するなど、障がい者が主役となって企業の健康経営の促進の一助となっています。SDGsが目指す「誰一人取り残さない」というグローバル社会の理想に適う投資先のひとつだと考えています。」

その上で投資先企業のご紹介としてさらに下記のように書かれています。

「この芽キャベツはシチューに入れるとおいしいんです!思い出の味で……」前日までの大雨が嘘であるかのように晴れたある日の朝、東京近郊で障
がい者が農業に従事している「わーくはぴねす農園」に見学取材に赴いてまいりました。

障がい者の社会参画の形の一つである障がい者雇用制度は、企業が法定雇用率以上の障がい者を雇用することによって成立しています。この農園では、主に知的障がいをお持ちの方が、野菜の栽培・収穫といった農作業を通して、農園をレンタルしている企業の社員として働いています。障がい者と企業のマッチングから就労定着、日々の業務遂行支援まで、一気通貫してサポートするのが、同社の子会社エスプールプラスの主力事業です。

利用者が自宅から通える圏内で、従来の就労継続支援事業では容易に達成しえない障がい者の経済的自立を目指すこのビジネスモデルは、同社の障がい者雇用にかける粘り強い試行錯誤が結実したものとして生み出されたものだといえます。障がい者の雇用継続率9割以上と、高い満足度を達成しながら同社の運営する農園数が拡大した背景には、前例がない中での行政との地道な交渉や、利用者のチーム編成の妙といったソフトなノウハウなどが存在し、容易に模倣できるものではなく高い参入障壁となって機能しています。

冒頭にあるような農園での案内や説明は、障がい者が分担して行ってくれました。自分の言葉で一生懸命伝えてくれた、手間暇かけて育てた野菜の栽培法や調理法は、私たちが知らないことも多く、その意味では障がい者が専門家であり先生になっているともいえます。

取材を通し、法令を遵守し障がい者一人ひとりの個性を大切にする同社の姿勢や、雇用した障がい者を事業活動に取り込もうとする農園利用企業の熱意を強く感じました。社会保障費の抑制が図られるマクロ環境下で、企業が共生社会へ担う責任はいよいよ重くなり、法定雇用率もさらに引き上げられる見込みです。同社が引き受ける社会的ニーズはますます拡大していくといえます。(関口 耕大)

山本氏のコメントは下記です。

障がい者雇用を営む同社が営業利益率で10%超を達成していることが「儲けすぎではないか」という社会的批判を招きがちです。しかしながら、ビジネスが「儲けすぎ」かどうかは、単に営業利益率だけではなく、資本効率(ROAやROIC)も含めた議論をするべきなのです。農園を経営する同社はむしろ、儲けすぎどころか、バランスシートが膨らみやすいビジネスモデルであるため、投資効率はむしろ低位であることが経営課題だとわたしたちは考えています。こうした世論と投資家との認識のギャップを埋めていくことも運用会社の役割と考えます。

障がい者を農園で雇用する同社の社会的意義は大きく、それなのに社会的な批判をされる方々がいることはとても残念です。批判者に対してはROICやROA指標の理解や説明をしていくことが重要です。わたしたちは、同社が社会的批判を避けるために、様々な新規ビジネスを自治体向け等に行っているようにも見えており、多角化によるバリューエションの低下(コングロマリット・ディスカウント)が懸念されます。これからも同社とは、粘り強く対話を重ねていきたいと考えています。(山本 潤)

というあたりを読んでいて思い出したのですが、かなり以前にネットの掲示板でエスプールについて書き、それを山本氏に褒めていただいたことがありました。

探してみたらまだありました。

みんなの運用会議室というこちらの掲示板です。これを書いたのは2017年ですから、もう7年も前ですね。で、今、その銘柄が長期投資の投資信託の組み入れ比率のトップになっているのはちょっと感慨深いです。

ここの10年チャートはこちらです。株価は高値1,200円台から急降下で300円台での底這い状態です。

この間、業績の伸びが鈍くなった時期もあったのですが、極端に悪化したということでもありません。ただ「成長株」から「普通」の株になったというように見えます。

株価が急降下した一つの原因はこの障がい者の就労支援モデルに対する批判的報道です。共同通信が批判的スタンスでの記事を掲載し、最近でも以下のような記事がありました。こちら。会社側が以前に出したコメントはこちら。

これらの批判は、「障がい者を金儲けの手段にしてけしからん」的な単純なものから、「丸投げで法定雇用率だけを満たそうとする企業はけしからん」というもの、また「これが労働の内容として適切なのか」というもの、様々な視点からのものがあります。

個人的にはこの事業は現実の社会的な問題への対応として意義、意味が大きいと考えています。但し、事業としては、かなり長期にはなると思いますが、過渡期的なものであり、そこに新たなビジネスチャンスもあるのではないかと思っています。

逆に言うとエスプールとして重要なのは「丸投げで法定雇用率だけを満たそうとする」ような顧客企業があったとしたらその姿勢を許さずに意識変革から具体的な取り組みをすすめていくような方向でのアドバイスをすることになるかと思います。

顧客の企業の中には既に特例子会社を設立し、その上でエスプールのサービスを利用しているところもあります。例えばこちらに紹介されている事例。

逆にそこまで意識も進んでおらず、様々な取り組みもできていない企業もあるでしょう。エスプールとしては、単に障がいのある人にとって働きやすい職場の環境を用意して運営することにとどまらず、いわば障がい者雇用と関わってのコンサルティング、エスプールの農園での雇用にとどまらず、自社で特例子会社を設立しての障がい者雇用に進もうと考えるのであればその設立や運営の援助をするようなこともビジネスとして成り立つのではないかと思うのです。但し、そのためには人的リソースの育成が非常に重要となりますが。

それは障がい者雇用は「本来ならばやりたくないが、しょうがないコスト」なのではなく、「障がい者雇用をすすめることによって社内の意識やとらえ方が変わり、学ぶことができた」というような方向への変化を作り出すようなことになるのかもしれません。

エスプールとしてはこうした面についての基本的な考え方、理念についてより強く会社としての考え方を示すのがよいと思いますし、それと関わっての具体的な取り組みなども紹介してほしいところです。株主対象の農園見学会などもぜひ実施してほしいですね。

個人的にはここの保有株数は1,200株程度です。既に投資元本は回収していますので、気楽な「恩株」状態になっています。

投資という視点では事業内容について上記のような見方、スタンスの違いがあるからこそ、株価の位置が低いところにとどまっているとも考えられ、となると、それは考え方、発想によっては投資のチャンスとなるとも考えられます。

事業ポートフォリオ全体を見渡すと、時々での社会的な課題に対応する形での「すきま」的な事業を立ち上げるようなことを積極的に行っています。これはねタイミングが合えばうまく利益につながってくると思いますが、その時だけで逆に事業そのものの意義や意味が薄くなる場合もありえます。山本氏はコメントの中では「多角化によるバリューエションの低下(コングロマリット・ディスカウント)が懸念」と書いています。これはどうなのだろう、社会的批判を避けるというより、ここの会社の本質が社会的課題に対応したビジネスを見つけていって、トライ&エラー的なところも含めて挑戦を続けていくようなところがあようにも思えるのですが。

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