IRセミナー 2395新日本科学 ユニーク プレゼンや資料には改善の余地(2)

IRセミナー 2395新日本科学 ユニーク プレゼンや資料には改善の余地(1)

上記の続きです。ということで、なかなか独自性があり面白いと感じたところも多かったし勉強にもなったのですが、プレゼンや配付資料には個人向けであるとはいえ投資家向けのIRセミナーとしては改善の余地があれこれあると感じました。

資料の表紙からして証券コードの番号がちゃんと記載されていません。細かいところですが、こういうところも丁寧に。

まず、基本的に、話の内容や資料からは企業の売上や収益の全体像の把握ができません。あれこれの事業を幅広くすすめておりそれぞれの意義や意味もあることはわかるのですが、一般的な会社案内をしているわけではなく投資家を対象としたIRセミナーですから各セグメントの売上や利益がどういう状況であり、それがどう変化していき、それを今後どのようにしていきたいのかという全体像を示すべきなのにそれが話からも資料からも的確に示されないので、いったいどの事業でどれぐらいどう売上があって、どこが効率的に稼げていて、どこは利益が出ていないか等々が包括的にとらえられないのです・・・。

もちろん、決算短信や有価証券報告書等をあたればこれらの情報の相当の部分は得られるのでしょうが、そもそもIRセミナーの資料にそこをきちんなと示すべきです。

逆に言えば、直接収益には現段階では大きな影響がないような事業は冒頭部分から並列的に紹介するのではなく最終のところで資料として付け加えておく程度のことにし、セグメント別の事業の紹介は現在の中心的な事業とそうでない事業で軽重をつけて説明するべきでしょう。

次に非臨床試験の部分です。カニクイザルなどの霊長類を用いての試験ということになりますが、海外も含めて自社でこの動物の飼育を行い非臨床試験を行っている点がここの特徴であり、配付された株主通信でも「安定的な実験用NHPの繁殖・供給体制に向けて国内外で戦略的大型投資をすすめています」との記載があります。なお、NHPとは(私も知りませんでしたが)Non-Human Primateの略でヒト以外の霊長類のことです。まあ、つまりは猿の類いの動物ということですね。

ということなのに、ここのウェブサイトを見てもIRセミナーの資料を見ても、この点についての詳しい説明や解説がありません。あったかもしれませんが見つけにくいです。戦略的大型投資をするにしてもどこにどのような形で投資をしてどの程度の頭数の繁殖を行い、霊長類の種類としては・・・云々といった詳しい説明がないのです。「猿」という言葉すらほとんど見られずNHPという一般的ではない略語を一般向けの株主通信に使用したりしています。

なぜこうなのかを質問してみたのですが、「動物愛護」団体、とりわけ過激な主張や行動をするそうした団体に対する配慮だそうです。連想するのは捕鯨活動を妨害するグリーンピース、あるいはシーシェパードなどです。「とりわけ人に近い霊長類を試験に使うとはけしからん」的な主張は考え方としてはありうることでいわば「普通」です。が、それが過激化し、例えばそうした飼育施設を破壊し飼育されている動物を「解放」するようなこととなればそれは犯罪行為になります。

過激な団体の違法な行動から企業を守るために情報開示を一定制限する、例えば、どこにどんな施設があって、どんな種類の動物がどの程度いて実際にどのような試験にその動物たちが関わっているのかといった点についての細かい情報開示は、企業を自ら「危険」にさらす行為とも考えられます。

ここには一定の理解はできるのですが、それにしても示されている情報が少なすぎるように感じました。動物実験は現在は新薬開発においては必要な過程の一つとされており、こうした過程があって多くの患者を助ける新しい薬も開発されていくことになるわけで、こうしたことに対する基本的な考え方、動物の飼育の環境や飼育方法に対する様々な配慮や具体的な取り組み等も積極的に企業とて示していく中味はあるはずで、この企業の中心的な事業でありここの特徴であり利益の源泉となる部分なのに、こうした部分までなにか「隠しすぎ」という印象がありました。こうした姿勢、姿勢や考え方としては企業としてのしっかりしたものがあってもそれを可能な部分について積極的に示さないとしたら、それは株式のバリュエーションが高くならない原因にもなりかねません。ここは可能な部分での開示はすすめていきたいという方向性はあるようには感じましたが、十分に検討し実施していってもらいたいと感じました。

次に新薬開発の部分です。直近に米国の審査機関から現状のままでは新薬として承認できないという通知があり、このネガティブな情報によって株価は下落しているのに、これについてのコメントが当初の説明の中でしっかりされていないと感じました。シラスウナギの養殖云々よりも重要な点で、逆にこの株価下落は、再申請し比較的短期で薬として承認されるようなことになれば逆に投資のチャンスになるとも考えられるのに、こちらからの質問で、本来であればもっと早く指摘してもらいたかったこと、追加の臨床試験はせずに再審査対応をする、早ければ2ヶ月、遅ければ○○(社長のコメントを失念・・)程度かかるか、といったコメントはいただけましたが、当初から可能な部分でのなるべく詳しい説明はするのが適当でしょう。

というようなことで、プレゼンの内容や資料が投資家向けのIRのプレゼン用として特化され焦点化されたものになりきっておらず、一般的な会社案内のような雰囲気が強いものになっていて、企業の基本的な姿勢との関わりの部分も含めて、個人向けのIRセミナーとしてなにをめざし、なにを理解してもらい、どうしてもらいたいのかというねらいに即した形で見直す、整理する、追加する部分がかなりあるように感じました。

厳しめのことを書いていますが、事業として自社での動物の飼育も含めた臨床前試験の実施というのはどこでもできるような事業ではなく、参入障壁も高いと考えられます。M&Aで取り込んだ長野県の伊那谷にあるイナリサーチという企業も臨床前試験に取り組んでいるということですが、ここは試験用のNHPについては購入する必要がありそのことが高コストになることにつながっているところがあるようです。自社で飼育しているものを回せばよいのでは?と聞いたのですが、そこまでの余裕は現状ではないということでした。逆にこのあたりが改善すればイナリサーチの業績改善にもつながることになり、利益率の上昇も期待できるかもしれません。

新薬開発の部分は実際にどう進むかは予断を許さないところだと思いますが、現在焦点となっている新薬以外にも出資をして開発をすすめている新薬候補もあり、こうした開発がうまくすすんで承認されれば業績改善に大きく寄与する可能性もあるかとは思います。

やはりリアルのIRセミナーは面白いですね。今後のここの動向に注目しておきたいと思います。

あ、そうそう、株主優待も対費用効果を考えても、株式のバリュエーションを高めることにつながる面もあるので検討してみてはとちょっと話しましたが、現状はすぐに優待実施の検討をするような雰囲気はありませんでした。

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