エンターテインメントとしての株主総会・キーエンス 株式分割と関わっての見解

エンターテインメントとしての株主総会・キーエンス 株式分割と関わっての見解

株式分割と関わっての見解は以下。

・昨年から今年にかけて、東証からのあたらめての投資単位の引き下げについての要望もあり、既に多くの高株価の企業が高い比率での株式分割を実施、あるいは表明している。株式の流動性の向上、投資しやすい環境を整えることは東証の要請であるとともに、市場全体の求めるところでもあろう。

・東証に上場している以上、各上場企業は基本的には取引所からの要請は「尊重」するべきだろう。「尊重」とは法的拘束力もないお願いについて、すべて盲従しなければならないという意味ではなく、それを真摯にとらえて各企業での判断、行動を行うということで、例えば分割をするにしても即座に東証が示す50万程度の金額になるような比率での分割を実施しなければならないわけではなく、とりあえず現状よりも最低投資額がかなり小さくなるような比率での分割を実施することなども含まれる。

キーエンスについてはこうした状況下でも、言い訳めいた短文のリリースを出すのみで今日まで分割と関わっての具体的な動きが見られない。以前に分割を実施した時の株価は今よりも安かったと思われ、そうした意味ではかつての分割実施の例をふまえても今、分割を実施しない理由はない。

単にキーエンスのみの事情を考えれば、ここで大きな比率での株式分割を実施することは、基本的には株主数増大と関わってのコストが増え、手間や人もかかるということで、事業の展開や収益性の向上等に対して大きなメリットがあるわけでもなく、むしろマイナスの影響が大きいとも考えられる。こうした視点から判断すれば分割を実施せず現状を維持することは企業の事業展開や収益性の向上、また株主価値の維持という点からも「合理的」な判断ともとれる。

・ただ、こうしたデメリットはなにもキーエンスに限ったことではなく、他の企業でも同様である。そうした中で、それもつい最近に上場した企業ではなく、全上場企業の中で時価総額3位、2位もうかがおうかという巨大企業が自社の都合のみを優先させるのではなく、市場の中でその要請に応えていくことは方向性としては当然の姿勢だろう。

現在の株価での最低投資額は株価が7万を超えている状況では700万以上が必要という状況になっている。さらに上には6273SMCがあるだけでキーエンスとSMCの2社がとりわけ最低投資額が大きい。この状況を企業としてそのまま放置することは、いわば「独善的」であり「不遜」との批判もあろう。そもそも単元株制度がどうなのだという指摘もあろうが、それはまた別のことである。

・批判されるのは単に分割を実施していない状況そのものだけでなく、なぜ実施しないのかの判断理由を示さない態度ということもある。
昨年、今年とこのことについて株主総会で株主の立場から質問しても全く具体的な回答がなく、いったいなにを重視して分割を実施しないままにしているのがが伝わらないし、わからない。こちらがなにを質問しどういう回答を求めているかわからないはずなく、意図的にずらしたような回答をして説明責任を果たそうとしない姿勢も適切さを欠く。

・つまりのところ、キーエンスはこのことについて具体的に回答したくないということなのだろう。なぜなら、この状況下で具体的に回答することは、さらなる批判にさらされるか、具体的な分割実施に向けての行動を求められるか、どちらかになる可能性が高く、いずれにしても会社にとって望ましいことにはならない可能性があると判断しているからではないかと推測する。

・キーエンスは独自の企業文化があることでよく知られている。合理性を重んじる社風であり、その直販体制を中心として顧客の要望をくみとりそれを深め、迅速に顧客の要望に対応する全体してのシステムはよく機能し、さらに発展している。

これだけの大企業でありながら、なお海外発展の余地は大きく、新製品の開発も継続され。さらなる成長も期待される。また企業全体としてのシステムが維持、発展している印象が強く、例えばニデックやソフトバンク、ファーストリティリングのような後継者問題はキーエンスでは生じないだろう。これはキーエンスの他社にない極めてすぐれた点であり、評価されるべきところだろう。

・が、このことが企業としての独善性、上場企業として求められる責任より自社の都合のみを優先させるようなことが認められることにはならず、説明責任を果たさなくても許容されるということにもならない。

キーエンスは企業の業績等についての情報開示の範囲が狭いことでもよく知られる。それは競合企業や顧客企業との関係等で情報を開示することがビジネスの展開にとって支障となる場合もあるということでまだわかる面がある。

・ただ、企業のウェブサイトを見てもIRの問い合わせ窓口が見つからなかった。あるのかもしれないけれど、少なくともわかりやすくはない。このあたりは積極的に株主や投資家の意見、質問を受け付け、コミュニケートしていこうとする姿勢が弱いとも理解される。必要な人員や手間をかけてもこのあたりも改善してほしいポイントのひとつである。

・結論的には早急に相応の比率での株主分割の実施が求められると考える。いきなり1:10の比率で株主数が一気に増加するような状況を避けたいいうことなら、1:2とか1:3程度の分割を実施してその状況から次のことを考え実施するという方法もよいだろう。

と同時に姑息に論点をずらして説明責任を果たさないような姿勢をあらため、さらなる批判にさらされたりや行動を求められたりすることになったとしてもしっかり
としたわかりやすい明快な説明をすることが求められる。

・上記の点については、質問の方法や内容等を工夫し、さらに問い質していこうと思っています。株主総会への参加を契機としてあれこれ考えてみることは個人的には楽しみ、エンターティンメントの一つです。単にトレードでの利益を求めるのみならず、こういう視点でも株式投資は楽しめると思っています。

今回のキーエンス総会シリーズはこれで終了です。これまで書いた今年の分の内容は以下です。

エンターテインメントとしての株主総会・キーエンス 議事・質疑応答(3)説明責任を果たしているとは言いがたい

エンターテインメントとしての株主総会・キーエンス 議事・質疑応答(2)相変わらずまともに回答しない!

エンターテインメントとしての株主総会・キーエンス 議事・質疑応答(1)

エンターテインメントとしての株主総会・キーエンス 会場・出席者編

エンターテインメントとしての株主総会・キーエンス 車窓編

エンターテインメントとしての株主総会・キーエンス 道順編

 

 

 

 

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